WOWW

Working On What Works 学校教育実践に生かす問題解決アプローチ研究会

WOWWとは

WOWW(ワウ)とは何でしょうか?

Working On What Works(うまくいっていることに取り組む)の頭文字に由来します。

「解決構築アプローチ」を生かした、様々な学校教育実践のことです。「解決構築アプローチ」については、次項をご参照下さい。
この学校教育実践には、学習指導、生徒指導、生活指導、教育相談、日常的な児童生徒との関わり、学級経営、保護者との協働、教職員間の連携など広範なものを含みます。

「海外先進研究教育実践プログラム」による在外研究と旭川でのWOWWの展開

2005年度に文部科学省の事業「海外先進研究教育実践プログラム」で、インスー・キム・バーグ、スティーブ・ディ・シェイザー両氏のところに約11カ月滞在し研究させていただく機会を持ちました。滞在中、両氏から解決構築アプローチとその学校教育現場での応用のひとつとしてのWOWWについて貴重な学びの場を体験させていただくとともに、リー・シルツ氏をはじめとする他のソリューション研究者、実践者との交流の中で、帰国後のWOWW実践について多くの示唆をもらいました。

「百聞は一見に如かず」の格言を持ち出すまでもなく、米国でのソリューション体験は私に帰国後のWOWW研究・実践に多くの可能性を与えてくれましが、同時に「言うは易く行うは難し」の格言通り、地域でのWOWWの実践と普及はそれほど容易なことではありませんでした。

試行錯誤を繰り返し、困難もありましたが、帰国後約6年経過し、ようやく自分自身で行うWOWWの充実と、地域の仲間との交流・学びの場を形成することが少しできてきたかなと感じています。お陰さまで、現在では、旭川は日本のWOWWのメッカになったとの過分な評価もいただくようになりました。また、最近は旭川にとどまらず、札幌、道外でのWOWW研修の講師としてお招きいただいて、日本でのWOWWの普及に微力ながら貢献させていただいていることを大変ありがたく思っています。

解決構築アプローチとは何でしょうか?

「解決構築アプローチ」に対する概念である「問題解決アプローチ」との対比でみるとわかりやすいと思います。

まず、「問題解決アプローチ」とは、たとえば感染症に対する医学的対処に代表されるアプローチです。
この「問題解決アプローチ」では、

  1. 症状、問題についてよく調べ、
  2. その原因(バクテリア感染など)を特定し
  3. 治療方針(ワクチン接種など)をたて、
  4. 実行する、

という対処になります。すなわち、この「問題解決アプローチ」では、「悪いところを治す(直す)、取り除く。」あるいは「不足しているものを補う」ということが基本的発想になります。

「問題解決アプローチ」はこの他にも、たとえば車が故障したときの対処法など、日常生活の中でもしばしば用いられています。このように、このアプローチが有効である場面も非常に多くあります。

その一方で、「問題解決アプローチ」を無批判に、心理臨床、教育、福祉などの分野へも援用することによる弊害への反省から、「解決構築アプローチ」が提案されるようになりました。

まず初めに、学校教育実践における「問題解決アプローチ」を考えてみましょう

「解決構築アプローチ」に対する概念である「問題解決アプローチ」との対比でみるとわかりやすいと思います。

  1. まず関係する教職員がその問題について詳しく観察、調査、情報交換し、問題の性質、深刻さの程度などを査定し、
  2. どうしてそのような問題が起きてしまうのか、どの子どもに問題があるのか、その子どもに問題、弱さ、未熟さ、短所があるのはどうしてなのか、保護者の関わりに問題はないかなど「原因」を特定するための話し合いや推論が行われ、
  3. 当該児童生徒の問題点を指摘し、弱さ・短所を「改善」していく指導を行う、また保護者にも問題点を伝え、指導するように依頼する、といった指導方針、指導計画を立て、
  4. 実行する、といった手続きがとられます。

この方法論で、うまくいくこともあるでしょう。

その一方で、このやり方ではうまくいかないということを経験的に感じている教師も少なくないのではないでしょうか?

  • とくに事態が深刻で、一般に”難しい事例”と言われる場合ほど、このような「問題解決アプローチ」による取り組みはうまくいかないことも多いのではないでしょうか?
  • 問題点、弱さ、未熟さ、短所を指摘し、改善するような指導を児童生徒がうまく受け入れてくれるでしょうか?児童生徒と教師の関係はうまくいくでしょうか?
  • 保護者との協力体制は良好に保たれるでしょうか?
  • 「原因」を追求する過程で、当該児童生徒や保護者を「悪者、やっかい者」扱いする空気が教職員間で必要以上に醸成されたり、あいまいな推測に基づく言説が新たな「事実」や「現実」を構成してしまっていないでしょうか?
  • 「突き止めた」はずの「原因」はより良いクラス作りに役立っているでしょうか?

改めて、解決構築アプローチとは何でしょうか?

このような経験から学んで、「学校教育実践における解決構築アプローチ(WOWW)」は生まれました。上述の例で、改めて、学校における解決構築アプローチによる対処を見てみます。

  1. 関係する教職員が「問題」について一通りの報告は受けるが、「問題」について詳しく掘り下げることはしない。その代わりに、「問題」がなくなった段階ではどのような素晴らしいクラスになっているのかについて、具体的に  明らかにしていく。この過程は、教職員間の話し合いはもちろんのこと、クラスの児童生徒と担任との話し合い、クラスの児童生徒同士の話し合いを通して行われます。
  2. 子どもの問題、弱さ、未熟さ、短所などを取り上げることをする代わりに、子どもの持っている成功体験、強さ、力、長所に焦点をあて、
  3. 教職員間で共通理解を図るとともに、児童生徒との関わりをとおして、それらを引き出し、子ども自らがそれを自覚し、活用できるように支援することを目指し、保護者にもその子のうまくいっている部分に焦点を当てた相互の取り組みとその情報交換を中心に協働を図り、
  4. 実行する、という進め方になります。

実は、多くの優れた教師は、意識的か無意識的かは別にしても、日常の教育実践の中にすでに様々な形で「解決構築アプローチ」的発想や対応法を取り入れていらっしゃるということがありますので、すでにうまくいっている教育実践の中に、多くの学ぶべきことが「解決構築アプローチ」的要素も含めて、宝の山のようにあるに違いないと考えているところです。

このような趣旨で、すでに行われている「解決構築アプローチ」的発想や取り組みを応用した、優れた教育実践から、皆で共に考え学び合える機会を持つことができればと考えております。このように、すでにうまくいっている実践から学ぶとともに、現在先生方が抱えておられる困難な事例について、解決構築アプローチ的観点から皆で検討してみることも役に立つかもしれません。
趣旨にご賛同いただける皆さまには、是非とも研究会の会員になっていただいて、共に学び合える機会が持てますなら幸甚です。

(文責 WOWW研究会会長 北海道教育大学旭川校 久能 弘道)

このページのTOPへ